報酬請求権
大いに必要な法的解決策
オーディオビジュアル作品の創作者は、法的に公平に扱われなければなりません。
この分野の法的な観点からの分析として最も包括的なものは、Xalabarderが行った調査における分析であり、オーディオビジュアル産業分野における公平性と持続可能性の向上のための法的解決策を提案しています。
1.その解決策は、欧州及び世界のその他の地域における著作隣接権の規則に合致するものです。
2.その解決策は、オーディオビジュアル作品の製作と経済的利用に関わる全ての関係者に有益です。代価の支払の流れは、利用者から創作者に対し、直接的に行われるようになっています。
3.その解決策は、製作者によるオーディオビジュアル作品の商業的利用には何ら影響を与えません。つまり、製作者は、オーディオビジュアル作品を経済的に利用する権限を完全に維持します。
原産国やオーディオビジュアル制作国に関わらず、全てのオーディオビジュアル著作者の平等な利益を確保することができます。
一部の国々の法的解決の例
スペイン
1996年以来、オーディオビジュアル作品の創作者には、作品の経済的利用の形態ごとに報酬が支払われること、また、支払は集中管理団体を通じて行われることが、法的に定められています。
インド
2012年、インドでは、脚本の映画上映以外の全ての利用形態について、脚本家に報酬が支払われることが譲渡不能かつ放棄不能なの権利として定められました。
アルゼンチン
2010年3月、官報は関税決議を発表し、特定の展示媒体ごとに視聴覚作品の普及に対する著作権の管理と徴収を可能にしました。
チリ
2016年10月に制定された「リカルド・ラライン法」は、現地のオーディオビジュアル創作者が作品の舞台演出、ラジオ放送オンラインでの利用や公衆送信の貸し出しなどに対して報酬を得ることが可能にするものです。報酬を得る権利は集中管理事業団体によって管理され、ライセンシーによって支払われ、プロダクション契約によって保護されます。
コロンビア
ペペ・サンチェス法はコロンビア国内における脚本家および映像監督の権利を保護し、2017年5月23日以降、作品の公開展示に対して公平な報酬を受け取ることを可能にします。
パナマ
2021年8月、国家著作権局は、2012年の著作権および関連権利法で認められたパナマの視聴覚著作者の権利管理を容易にするために、集団管理団体の運営を承認しました。
ウルグアイ
2020年1月、ウルグアイは脚本家、映画監督、および音楽作品の作家または作曲家のための視聴覚作品の公共通信に対する報酬の権利を確立する法律を制定しました。この権利は譲渡不能であり、その管理は集団で行うことができます。
オーディオビジュアル創作者について
オーディオビジュアル作品の創作者(脚本家及び監督)は、自らの作品の経済的利用に関する独占的権利を有していますが、公平な報酬を得ることはまれです。これは、作品のオンラインでの経済的利用について特に顕著です。
これは、オーディオビジュアル作品の制作の中核である創作者たちに不公平であり、著作権の基本原則に反します。
この事態は、多くの国々で、創作者たちの職と生計を脅かし、創造産業の発展の基盤を脆弱にしています。
異なる経済的利用形態ごとの公平な報酬は、契約では保証されない
この調査により、オーディオビジュアル作品の創作者の報酬は、製作者との契約に大きく依存していることが明らかになりました。このことが、創作者たちが公正で公平な報酬を得ることの妨げとなっています。その理由として、以下の点が挙げられます。
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製作者との契約交渉において、創作者たちの立場が弱い。
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製作者に著作権を譲渡することが法的に想定されている。
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契約時には、作品が成功するかどうかは予測不可能である。
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「バイアウト」型の1回払いの契約が慣例化している。
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作品の創作者とエンドユーザーの間に様々な「仲介者」が挟まれており、契約関係の長いチェーンを形成している。
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欧州の法制度と世界のその他の地域の法制度の間に調和がない。
報酬を確保する国は少ない
いくつかの国では、創作者組織とプロデューサーとの間の団体交渉または自主的な集団管理によって、著作者に報酬が支払われています。しかし、これは強力な労働組合や集団管理組織が必要なため、ごく一部の国でしか成功していません。
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カナダやアメリカなどでは集団協約が確立されており、作品の利用に対するある程度の報酬が保証されています。
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ヨーロッパ、ベルギーやフランスでは団体管理組織による自主的団体協約に基づいて、ラジオ放送より使用される作品に対する報酬を確保しています。
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アルゼンチンではオーディオビジュアル作者は、時間をかけて蓄積された自発的な集団努力に基づいて報酬を得ています。
創作者たちに公平な報酬が支払われるようにするための法的メカニズム
この調査によると、オーディオビジュアル作品の創作者が公平な報酬を確実に受け取れるようにするための最も効果的な方法は、オーディオビジュアル作品の創作者の報酬請求権を法律で規定し、集中管理団体に集金を委託することです。
欧州連合加盟国の28ヵ国のうち19ヵ国がオーディオビジュアル創作者に対する報酬制度を実施しており、主にケーブテレビによる報酬(指令93/83/EECにより義務付けられた集団管理)と私的複製による報酬が保証されます。
オーディオビジュアル作品のその他の経済的利用の形態については、オーディオビジュアル作品の創作者の報酬は、以下の点に依存しています。
各国の著作権法が、その他の利用形態の場合の報酬請求権について、どう定めているか。ポーランドの場合、放送や劇場公開の場合など、複数の利用形態についての規定が存在します。
集中管理団体が独占的に報酬を管理することが制度として定められているか(スペインとイタリアの場合)。
チリやコロンビアでは最近、オンライン利用を含む様々な種類の作品利用について、集団管理による報酬を国内法に盛り込みました。
譲渡不能かつ放棄不能なの権利である報酬請求権のすすめ
この調査は、世界各国の現行法制度とベストプラクティスの分析に基づき、オーディオビジュアル作品の創作者が公平な報酬を得る権利を譲渡不能かつ放棄不能なの権利として保証する法律を制定することを奨励しています。
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全ての経済的利用の形態(オフライン及びオンライン)に適用される。
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作品の経済的利用の権利を製作者に移譲することと引き換えとする。
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ライセンシーが直接支払い、集中管理団体が管理する。
この調査では次の要素の重要性が強調されています。
法律の中で言及されている規定のこと。
公平な報酬:通常、サービスからの収入に基づく比例的な報酬。
譲渡不能かつ放棄不能な権利:報酬権利が譲渡不能かつ放棄不能な権利ではないため、報酬を得る権利はプロデューサーからの圧力で護られたり、譲渡されたりする傾向があります。
作品使用権利をプロデューサーへ譲渡:排他的な権利を交渉する能力がないので報酬権と共に作品利用が保証されます。
ライセンシー/最終ディストリビューターより(プロデューサーではなく)支払われる。ライセンシーや最終ディストリビューターはメディア事業者で作品の講習公開を決めます。これにより、オーディオビジュアル創作者への支払いの責任者が明確になります。
集中管理事業団体による事業管理。集中管理事業団体は安定した団体で、故郷を超えた場合も含めて、著作者への公正な報酬を確保するための規模の経済の知識と視点を持っています。